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『京都のソウル遊具?お皿公園って何?』〜「迷子観光コマレ」第1話〜

やーん遅刻遅刻!!


彼女の名前は、牧田 小稀(マキタ コマレ)。京都に観光でやって来た大学4回生だ。彼女は今、インスタ映えを求めて金閣寺に向かっていた。

しかし碁盤の目状に設計された京都の街は、何度曲がっても似たような角だらけ。同じ道をぐるぐると回り続けていた。

「あれ?もしかしてこの公園さっきも来た?もー!このままじゃ、拝観時間に間に合わないよ〜!」
と叫んだその時。

「おい、君ちょっといいかね。」
ふいに、鼻を詰まらせたような特徴的な声が彼女を呼び止めた。

コマレは、白衣を着た異形の生き物とバッチリ目があった。
「ほげえっ!」
あまりの驚きに、コマレは変な声を出してしまった。
「なんかっ、変なペンギンがいるっ・・・!」
「ふむ、驚かせてしまってすまないね。また早々な指摘で恐縮だが、私は変なペンギンではない。こういうものだ。」

「どニッチ研究家・・・?」
人間が普通に生活していれば気にすらしないことを、あえて徹底的に調べて発表し、強引に人々に興味を持たせる。それがどニッチ研究だ。」
「なんてはた迷惑な研究っ」

「それでは本題に入ろう。」
「いや私急いでるんですけど」
「君は、あれを知っているかね?」
ペンギンは公園のど真ん中に配置された遊具を指差した。

「ん?なにこれ、滑り台?」
「ふむ、どうやら初見のようだな。この遊具のある公園は、昔から”お皿公園”と呼ばれ親しまれている。」
「ああ、確かにお皿の形っぽいと言えばぽい。」
「お皿公園は京都のあらゆる所に点在しているが、私の周りの非・京都人の反応を見るに、どうやらこれは全国区ではないらしい。ではもしや、これは京都にしかない”ソウルフード”ならぬ”ソウル遊具”なのではないかと、どニッチの香りを感じた訳だ。」
と、ぴーちゃんはどこからともなくプレゼン道具を取り出した。
「ああ、ずっと立たせてすまないな。座りたまえよ。」
「え、あ。ありがとうございます。」

「まず私はアンケート調査から始めた。」
「アンケート?」
「この写真を持って、道ゆく50人に知名度調査を行なったのだ。」
「うわあ、暇だっ。」
「するとすぐに、この仮説は間違っているということがわかった。見たまえ、これが調査対象者の出身地と知名度の分布図だ。」

「この遊具が出身地にあった人には、無かった人にはのシールを貼ってもらった。」
「あれ?結構どこにでもある?」
「そう。あったり無かったりする。しかし、ここで新しい事実が見つかった。まず”出身地にこの遊具があった”と答えた人に、その呼び名を訪ねたところ、京都以外の出身者の100%がこう答えたのだ。」

「え、名前・・・、があるんですかこれ?」
「いや、別につけてませんでしたけど・・・?」
「なに名前って?そんなんいる?」

「うん、私も同じこと思った。」
「しかしだ!同じ質問を京都出身者に尋ねたら、面白いことが起こった。」

「うわっ、なんかいっぱい言ってる!」
「そう!なぜか京都だけやたらとバリエーションが豊富だったのだ!しかも、彼らはさも当然のように答えていたが、自分たちがつけていた名前は、京都限定どころの話ではなく、さらにごく限られた地区での呼び名でしかなかったのだ!」
ぴーちゃんは興奮のあまり、体を震わせ始めた。
「えっ、なに?ちょっと大丈夫ですか・・・??」
「これぞ・・・、これぞ・・・!」

かくして、二人は出会った。いや、こんなことをしてる場合かコマレよ。果たしてコマレは金閣寺に行けるのか。

次週、第2話「お皿公園の遊び方 最新トレンド2017」 へ続く

投稿日:2017.10.15